放射線防護分科会会誌
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IVRにおける患者と術者の被曝線量の実態調査 : 第1法
飯田 泰治茶畠 光浩清水 満田村 鋒男
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2002 年 14 巻 p. 40-

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抄録

【目的】近年,病気による治療手段は外科的な手術から侵襲度の低いIVRによる治療法へ拡大が図られている.一方で、患者の被曝線量の増大がクローズアップされるようになり、IVRによる皮膚障害の症例がわが国でも報告されるようになった。そこで、(株)千代田テクノルの協力によりSkin dose monitor(SDM)を用いてIVR時に患者が受ける被曝線量の実態を調査したので報告する。【使用器機】1.東芝社製DSA装置(1)X線発生装置KXO-80C (2)撮影支持装置CAS-8000V (3)画像処理装置DFP-2000A 2.線量計(1)Skin Dose Monitor 104-101(2)Radcal model 9015 空気吸収線量測定用プローブ10×5-6(6cc) 【方法】SDMをX線錐の中心線上に位置させ、絞り前面から寝台下面まで移動させてX線量を測定し、絞り器や検査寝台の影響を調べた.測定は管電圧を60kV〜120kVまで10kVごとに行った.SDMのトレーサビリティはRadcal線量計を用いて行った.基礎実験を基にSDMを絞り器表面に取り付けて、検査治療時の患者の皮膚線量の総量(以下、入射総線量という)を測定した.後方散乱係数は腹部用水ファントムを用いた実験から求めた.入射総線量から透視線量と撮影線量を分離するため、撮影電圧50kVから10kV間隔で120kVまでに対して160mA、200mA、320mA、400mAの各撮影電流を組み合わせて、撮影時間を10msecから10msec間隔で100msecまで変化させ撮影線量を測定して撮影線量テーブルを作成した.臨床での測定は腹部IVR(22例)、腹部検査(27例)、頭部検査(13例)を対象とした.測定時に透視時間、撮影条件(管電圧、管電流、撮影時間、撮影枚数)を記録した.【結果】入射総線量はTable 1に示すように腹部IVRで1734±720mGy、腹部検査で899±360mGy、頭部検査で1484±596mGyであった.入射総線量に占める透視線量と撮影線量の比率はTable 2に示すように腹部IVRで68.4:31.6、腹部検査で34.2:65.8であった。腹部IVRの透視時間と透視線量は腹部検査と脳血管検査に対して有意に大きかった.透視線量率はFig.3に示すように脳血管検査、腹部検査、腹部IVRの順に有意に高線量率となった.【考察】腹部IVRの入射総線量は腹部検査の約2倍であり、最大で3.1Gyにもなった.この線量が同一皮膚面に入射したとすれば皮膚障害の発生を考慮しなければならない.特に、IVRでは拡大の使用により透視線量率が腹部検査に比して有意に高くなるため危険性が増す.腹部IVRでは透視線量が入射総線量に占める割合は腹部検査の約2倍となり、腹部IVRを行う上で透視線量をいかに低減するかがこれからの問題であることが示唆された.【結語】腹部IVRにおける入射総線量は最大で3Gyを超え、皮膚障害を発生する危険性が示唆された.腹部IVRでは拡大を利用した透視を多用するため透視線量は腹部検査の約2倍であった.今後、IVRでは透視による被ばく線量の低減が強く求められる。[table][table][figure]

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© 2002 公益社団法人日本放射線技術学会
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