教育方法学研究
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K.ツァイヒナーにおける多文化教育と教員養成プログラム : 社会正義を志向する教員養成プログラムの特徴と意義
上森 さくら
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2011 年 36 巻 p. 73-83

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抄録

本稿の目的は,「社会正義を志向する教師教育」の教員養成プログラムに焦点を当て,その特徴と意義をK.ツァイヒナー(K.Zeichner)の理論と実践の展開を検討することで明らかにすることである。その結果,プログラムの形態に関しては,学生の経験や考えを中心とする「統合アプローチ」を用いることを前面に出し始めていることが明らかとなった。次に<大学での多文化教育の理論等に関する学び>での特徴を検討した。確認されたのは以下の三点である。第一に,実習先の子どもの実態と結びつけながら,子どもの生活背景と社会的構造のつながりを理解することである。第二に,自文化と異文化の相対的な把握が目指される。これにより社会的構造に隠された特権階層を明確化している。第三に,文化的特権階層がつくった社会の基準から転換しようとしていることが見て取れた。三点に一貫するのは,子どもを取り巻く環境と社会的構造へのつながりに対する着目が精細になっている点である。中でも特筆すべきは,学生が子どもを取り巻く環境と社会的構造に着目する際に,必ず自分自身を社会的構造のどこに位置しているのかということを認識させる仕掛けの存在である。

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© 2011 日本教育方法学会
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