空気調和・衛生工学会 論文集
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水-LiBr-1,4-dioxane溶液におけるLiBrの水への溶解度と溶解度増大機構の考察
工藤 雅成小嶋 高良高橋 晋坂本 大助高橋 燦吉
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2002 年 27 巻 85 号 p. 1-9

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抄録

高濃度LiBr水溶液に1,4-dioxaneを添加するとLiBrの水に対する溶解度が向上する.本研究では水-LiBr-1,4-dioxane溶液におけるLiBrの水への溶解度を冷却法による晶析温度を用いて測定し,水-LiBr-1,4-dioxane溶液の3元系状態図を完成させた.また,1,4-dioxaneを添加したことによって生じるLiBrの水に対する溶解性の増大メカニズムを,Li^+イオンとその周りに配位する構造化された水分子のモデルを用いて考察し,熱力学量の測定を試みた.本論文では,LiBr濃度17.3〜52.5mol/kg(60〜82.0wt%),1,4-dioxaneの混合モル分率Xc=90〜0.97(第一成分は水)で実験し,次の結果を得た.1)高濃度LiBr水溶液に1,4-dioxaneを添加することにより広範囲の温度領域にわたり水に対するLiBrの溶解性が増大した.2)Xc=0.97でLi^+イオン周りの水分子の構造化がもっとも促進され溶解度が向上する.水単体に対し得られたエントロピー効果量は0.99J/(mol・K)である.3)Li^+イオン周りの水分子の構造化モデル(7:10モデル)の安定化エネルギー量,-23900J/molと,実測値より得られた五員体構造化エンタルピー量,ΔH°_<hy>=-21200J/molは近い値を示しLiBrの水溶解性増大のメカニズムを表す有力なモデルと考えられる.

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© 2002 公益社団法人 空気調和・衛生工学会
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