2010 年 64 巻 1 号 p. 33-40
土壌環境中に存在する微生物の多様性や土壌環境変化への微生物群集の応答を調べるため,リアルタイム定量PCRアッセイと末端制限断片長多型解析(T-RFLP)法を併用した手法を確立した。この解析手法から,標的遺伝子領域に基づく微生物群の末端制限断片(T-RFs)サイズとピーク高(相対値)の情報が得られる。T-RFLPプロファイリングの実測情報とクローン解析から得られた遺伝子配列のin silico解析によるT-RFsプロファイル情報がほぼ一致することから,本法が精度の高い解析技術であることを示した。また,検出されたT-FRsプロファイル情報をもとに多次元尺度構成法分析で微生物群集の類似性とその動態を表す方法,そしてT-RFsの相対的存在量の頻度分布順位図から微生物の多様性を示す方法を紹介した。さらに,T-RFsプロファイル情報をもとに土壌微生物群集を推定するバイオインフォマテッィクスの利用方法を示した。今後のデータベースの充実により,定量PCR-T-KELP法が土壌微生物群集モニタリングに大いに役立つことを期待している。