生産現場での人への危害は機械の危険源と人が同居し発生する.従来の労働安全は人に依存し,作業者の安全を確保するために,主として作業者への教育を重視し,事故が起きると作業者の不注意とされることが多かった.機械の確定的危険源にアプローチし,危険源を除去あるいはリスク低減することで安全を達成しようとするのが,機械安全の基本であり,この場合,事故が起きても人を責めないことが原則である.この機械安全におけるリスクベースド・アプローチの方法論も近年拡大・進歩しているために,グローバルな観点からこれらの概念ならびにそれに関連する安全要素技術の現状を整理し,時代の要求に則した対応が,各ステークホルダに求められてくる.隔離の原則・停止の原則に加え,これから人と機械の協働を実現するためには,新たに共存の原則というものが必要とされてきているが,基本は予防概念としての安全設計を適切に低減されたリスクまで事前に行い,機械設計者がやるべきことを成した後の残留リスクによる事故は社会が許容し,被災者は保険により救済・補償されるということである.科学技術の進歩に応じた社会制度の整備も必要とされる.