2016 年 10 巻 2 号 p. 97-105
脱毛症には先天性,男性型,円形,瘢痕性,休止期脱毛,抜毛症などがあるが,このうち免疫反応が関与する代表的な疾患は円形脱毛症である。瘢痕性の一部にも関連しているが,今回は円形脱毛症に着目して免疫からみた病態を解説する。円形脱毛症の病態の捉え方の一つとして,遺伝的背景と誘因が重なりIFN-γ産生性の細胞傷害性T細胞(CTL)を中心とした自己免疫反応があげられる。MICA,CXCL10を発現した病変部毛包にNKG2D陽性CTLが集簇し,メラニン蛋白など毛包由来の自己抗原に対して自己免疫反応を起こしているという捉え方である。さらに毛包のケラチノサイトからのIL-15がCTLを刺激する。爪にも症状が出ることから,爪と毛包に共通した抗原がターゲットになる可能性もある。こうした病態理解の進歩とともに,最近,JAK阻害薬の有効性が検討されている。今後の新たな治療展開が期待される。