森林立地
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森林土壌における斜面位置、深さ別のガス拡散係数の特徴およびCO_2フラックス
島田 博匡戸田 浩人生原 喜久雄小池 孝良
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1998 年 40 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

森林土壌生態系でCO_2フラックスを明らかにするため,斜面位置別,深さ別のCO_2フラックスの季節変化を調査した。群馬県勢多郡東村にある東京農工大学演習林の,同一斜面の斜面下部(スギ林,標高730m),斜面中部(ヒノキ林,760m),斜面上部(ヒノキ林,800m)に試験地を設置した。林齢は42年生で,母材は中古生層の粘板岩である。CO_2フラックスは,斜面位置別および深さ別の土壌のCO_2濃度と,遅沢・久保田(1987)のガス拡散測定器を改良して測定したガス拡散係数Dから算出した。調査した深さは0〜5,5〜15,15〜25,25〜35,35〜50cmである。いずれの斜面位置および土壌深さにおいても,気相率の増加によって相対ガス拡散係数D/D_0が増大し,0〜5cmでは直線式で,5cm以深ではべき乗式で近似された。同じ深さならばD/D_0に斜面位置による大きな違いがなかった。夏期の地表面からのCO_2フラックスは,斜面下部において冬期の3〜4倍,斜面中部や上部では数十倍であった。夏期にみられた地表面からのCO_2フラックスのピークは,どの斜面位置でも6×10^<-5>g・m^<-2>・s^<-1>前後であった。夏期における深さ50cmまでのCO_2回転時間は概ね10時間程度と推定された。地温と地表面からのCO_2フラックスの間には指数関数的な関係がみられた。1年間の地表面からのCO_2フラックス量は,斜面下部,中部,上部でそれぞれ13.4,6.5,9.9t・ha^<-1>・y^<-1>と推定された。これらの値は,すでに報告されている日本の森林土壌からのCO_2フラックス量と比較して小さい値であった。

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© 1998 森林立地学会
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