1996 年 38 巻 1 号 p. 73-79
同一地域に植栽されたスギ科の常緑性4種(スギ,タイワンスギ,コウヨウザン,センペルセコイア)と落葉性2種(メタセコイア,ヌマスギ)の葉の水分特性の夏季から冬季にかけての変化を調べた。各樹種について東京大学農学部附属千葉演習林に生育する1〜3個体から枝葉を採取し,当年生葉の水分特性をプレッシャー・チャンバーを用いてP-V曲線(pressure-volume curve)法により測定した。落葉性2種のうちメタセコイアでは10月と8月とで葉が十分に吸水したときの浸透ポテンシャル(Ψ^<sat>_s),葉が膨圧を失うときの水ポテンシャル(Ψ^<tip>_w)に差がななかったのに対してヌマスギでは10月にΨ^<sat>_s,Ψ^<tip>_wが低下した。常緑性4種についてはいずれも気温が最も低い2月にΨ^<sat>_s,Ψ^<tip>_wが最も低かった。タイワンスギとコウヨウザンでは10月のΨ^<sat>_s,Ψ^<tip>_wが8月に比べて低かったのに対してスギとセンペルセコイアでは10月と8月とではΨ^<sat>_s,Ψ^<tip>_wに差が認められなかった。このような低温化にともなう葉の水分特性の変化の違いは各樹種の低温に対する感受性,適応性の違いを反映している可能性がある。