保健医療社会学論集
Online ISSN : 2189-8642
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原著
遺伝学的リスクの意味づけに関する別様の理解可能性
木矢 幸孝
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2022 年 33 巻 1 号 p. 56-65

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抄録

遺伝学的検査の出現は人々に自身の遺伝学的リスクと向き合うことを可能にした。先行研究では、主として遺伝学的リスクを有する個人はそのリスクに対して罪悪感や責任感等を抱いていることを示してきた。しかし、遺伝学的リスクを「大きな問題」ではないと語る人々の経験は十分に分析されてこなかった。そこで本論文では、遺伝学的リスクを「大きな問題」として捉えていない非発症保因者の語りをN. Luhmannの「リスク」概念と「危険」概念を用いて分析することで、遺伝学的リスクの意味づけに関して、これまでとは別様の理解を示すことを目的とした。その結果、遺伝学的リスクを「大きな問題」ではないと語る人とそうでない人はリスクの意味内容が異なり、両者には保因者の役割や子どもに対する責任の所在において差異があることが示された。同時に、両者は遺伝学的リスクの問題化の認識において、時間軸上にずれがあることが提示された。

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© 2022 日本保健医療社会学会
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