気管支学
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気管・気管支原発の Low-grade malignant tumor : 気管支鏡所見および臨床経過の検討
大森 久紀楠 洋子平島 智徳玉野井 優水梁 尚志松井 薫益田 典幸中川 和彦高田 実菊井 正紀森野 英男瀧藤 伸英今村 純孝福岡 正博
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1994 年 16 巻 1 号 p. 11-20

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抄録

中枢気道発生のいわゆるLow-grade malignant tumorとされている自験例(中心型カルチノイド10例, 腺様嚢胞癌5例, 唾液腺型混合腫瘍 : 以下混合腫瘍3例)について, 気管支鏡所見および臨床経過を検討した。カルチノイドは, 気管支腔内への増殖が主体で, 全例ポリープ型を示し, 周囲粘膜への明らかな浸潤所見は見られず, 蒼白ないし赤色調で, 壊死を伴うものがみられた。腺様嚢胞癌は, より中枢側の気管・気管支より発生し, 形態はポリープ型から粘膜下浸潤型まで様々であったが, いずれも強い長軸進展の傾向がみられ, 腫瘍周囲の気管支壁粘膜下への浸潤を認めたものが多かった。全例蒼白調で粘膜に被われた凹凸不整を呈し, 樹枝状の血管怒張の著明なものが多かった。混合腫瘍では形態的な特徴は指摘できないが, 周囲粘膜下への浸潤は認めなかった。中心型カルチノイドには進行癌は見られなかったが, 腺様嚢胞癌の3例, 混合腫瘍の1例にIII, IV期の進行癌が見られ, それらは全例癌死であった。手術を施行した症例の生存期間は6∿153ヵ月(平均60ヵ月)で全例生存中であるが, 全体の5年生存率は, カルチノイド, 腺様嚢胞癌, 混合腫瘍でそれぞれ67%, 30%, 67%と低値であった。low-grade malignant tumorといえども進行例や非手術例の予後は悪く, 早期発見が重要であると考えられた。

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© 1994 特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
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