歯科医学
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大阪歯科学会シンポジウム
口腔内細菌による有機酸産生量を低下させるために
池尾 隆
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1998 年 61 巻 2 号 p. 121-128

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抄録

う蝕発症の直接的原因はプラーク内細菌の産生する有機酸の反応である.そこで, う蝕予防の観点から, 有機酸産生量の低下を目指して, 細菌の糖代謝に影響を及ぼす代用甘味料が開発されてきた.わが国で開発されたカップリングシュガーをはじめとする糖質系の代用甘味料は, 細菌増殖に関与する菌体外多糖合成量や有機酸産生量を低下させた.また, ジペプチドであるアスパルテームは, 甘味度がスクロースの180倍もあり添加量が少量でよいことから, ダイエット甘味料とよばれている.これらは, う蝕発症の面からみると, 低う蝕性あるいは非う蝕性甘味料と考えられる.一方, 1997年4月に食品添加物として認可されたキシリトールは, メディアの影響もあり, 急速にわが国に浸透した代用甘味料である.キシリトールは, それ自身が細菌により代謝されないのみならず, 他の糖質の細菌内代謝, すなわち, 有機酸産生をも阻害することが明らかにされている.したがって, 抗う蝕性の甘味料と考えられる.フッ素応用に加えたて, キシリトールによるう蝕予防は, 21世紀にむけた口腔保健に非常に有用である.

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© 1998 大阪歯科学会
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