歯科医学
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Bite jumping appliance の作用機序に関する実験的研究 : カニクイザルにおける効果
吉田 忠雄
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1996 年 59 巻 1 号 p. 1-14

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抄録

歯科矯正臨床における骨格性上顎前突の治療に際して, 機能的矯正装置は, 下顎骨の成長促進と骨改造を期待して用いられる. 今回, Bite jumping appliance (BJA)をカニクイザルに使用し, その作用効果について, 形態学的, X線学的および組織学的に検討を行った. サルは3頭使用し, その内2頭を実験群, 1頭を対照群とした. 装着期間は1日18時間として32週間装着し, 装置撤去後の観察期間は24週間とした. 動物を安楽死させたのち, 脱灰標本と非脱灰標本を作製し, 組織学的に検索した.
模型所見では, 実験群の側方歯群において full Class IIIの関係となったが, 対照群においては Class Iのままであった.
頭部X線規格写真所見によると, 実験群では装置装着後下顎は前下方に成長したが, 上顎の成長はほとんどなかった. また, 上顎前歯部ではわずかに前下方に migrationが認められた. 組織学的所見では, 装置撤去直後には下顎頭の軟骨層において著しい変化は認めなかった. 一方, この部位に対応する関節窩においては, 軟骨細胞がみられ, これに続く天蓋部から後関節突起前壁から下方にかけて, 数層の resting lineがみられた. 装置撤去後の観察期間では, 下顎頭部において, 円板中央狭窄部から後方にかけて軟骨層の肥厚がみられた. 中央狭窄部に対応する関節窩から後方にかけて数層の軟骨細胞がみられ, これに続く天蓋部から後関節突起前壁にかけては, リモデリングによって, 形成された添加層が吸収されたため, ヘマトキシリンに濃染された resting lineが, 断裂しているのが観察された. これらは下顎骨の前方誘導によって, 前方位で機能するように位置付けられた咬筋や側頭筋の作用により, 下顎骨の形態的な変化が生じたためと考えられる. 以上の結果から, 骨格性上顎前突の治療において, BJAは効果的な機能的矯正装置であることが示唆された.

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© 1996 大阪歯科学会
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