歯科医学
Online ISSN : 2189-647X
Print ISSN : 0030-6150
ISSN-L : 0030-6150
ラットの歯の実験的移動に及ぼす定常磁場の影響
高橋 啓
著者情報
ジャーナル フリー

1993 年 56 巻 5 号 p. 415-425

詳細
抄録

 磁場は診断および治療に医療分野で応用されている。矯正歯科領域においても、定常磁場はすでに歯の移動に臨床的に応用されており、疼痛などの不快感がなく臨床的治療効果をあげることができたと報告されている。そこで著者は、定常磁場が歯の人為的移動に与える影響について検討した。
 Wistar 系雄性ラット 120 匹(42 日齢)を 7 日間準備飼育したのち、全身麻酔下で上顎第一臼歯が頬側方向に移動するように初期荷重を 20 g として作製された装置を上顎中切歯にコンポジットレジンで固定した。装置装着 30 分後、アクリル板とステンレス棒からなる装置でラットの体部を固定し、実験群には電磁石で最大磁束密度約 60 millitesla の定常磁場を作用させ、対照群には同様の処置を行ったが、電磁場のみを与えなかった。装置装着 3, 7 および 10 日後にラットを屠殺し、歯の移動量を計測したあと、標本を作製して HE 染色を行い観察した。
 実験群の歯の移動量は対照群と比較して、3 日間では有意差は認められなかったが、7 および 10 日間では有意に大きかった。実験群の 7 および 10 日間の歯の移動では、圧迫側歯槽骨の穿下性骨吸収の進行とともに周囲の血管の拡張と充血、破骨細胞による活発な骨吸収が認められた。
 以上の結果から、定常磁場を作用させることで、歯の移動を促進させる可能性が示唆された。

著者関連情報
© 1993 大阪歯科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top