歯科医学
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小児における顎関節運動の解析
大下 智友美
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1993 年 56 巻 5 号 p. 385-397

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抄録

 近年、若年の咬合異常者と顎関節症状を有するものとの関連について注目が集まっている。本研究は、小児における顆頭運動の基礎的なデータを得ることを目的として、下顎に対して終末蝶番運動、protrusion-retrusion、mediotrusion-medioretrusion、opening-closing という 4 つの基本運動を行わせ、顆路描記装置 Axi-Path II Recorder を用いて顆頭運動路の三次元的な記録を行った。そしてその運動路の距離ならびに角度計測を行い、平均値を求めると同時に計測結果について成人と比較分析し、以下の結論を得た。
1. Manipulation technique により reference position での顆頭の蝶番軸点を求めることは、小児においても可能であり、かつ有効であることが認められた。
2. Hellman の dental stage III A~III B の小児の顆頭運動について各計測項目における平均値のデータを求めることができた。
3. 小児の excursive な運動は成人よりも浅い角度で滑走していた。
4. Protrusion、mediotrusion 時の顆頭の運動距離について小児と成人を比較したところ有意差は認められなかった。Opening 時の運動距離は小児のほうが有意に小さかった。
5. Mediotrusion 時の顆頭の側方変位量について左右を比較すると、小児では Motility、Mobility ともに左右差がみられなかったが、成人では右側のほうが左側より大きな値を示した。小児と成人を比較すると、右側では Motility、Mobility ともに差が認められなかった。左側では Mobility には差が認められなかったが、Motility は成人のほうが小児より小さな値を示した。
 これらのデータは小児歯科臨床においてアンテリアガイダンスとポステリアガイダンスの調和のとれた顎運動を行うことのできる顎顔面系の成長を育成するうえで重要な参考資料になると考えられる。

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© 1993 大阪歯科学会
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