歯科医学
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学位論文の内容要旨および論文審査の結果要旨
義歯安定剤の細胞毒性について(in vitro) (大阪歯科大学大学院歯学研究科博士論文内容要旨および論文審査結果要旨)
垣内 英也
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1990 年 53 巻 1 号 p. g51-g52

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抄録

義歯安定剤の細胞毒性をin vitroにおいてしらべるために, 市販の9製品 (粉末状3製品, ゴム状3製品, クリーム状2製品, テープ状1製品) について, マウス結合織由来のL-929細胞, ヒト喉頭由来のHEp-2細胞, 正常ヒト歯肉由来のGin-1細胞の3種類を用いて, 細胞障害からの回復度を指標とした細胞回復度試験法を中心に, 寒天重層法ならびに浸漬法も活用して研究を行った. その結果, 試料を添加した培養液のpH値は粉末状の1製品であるファストン (FT) のみ低かった. 一方, 同種のリジデント (RD) ではわずかにアルカリ傾向を示した. しかし, 他試料ではほぼ中性に近いpH値を示した. 細胞回復度試験法では, 粉末状3製品およびクリーム状2製品とテープ状1製品で中等度の, ゴム状3製品では低い細胞回復度をそれぞれ示した. 一方, 寒天重層法では逆に粉末状3製品の細胞毒性は強くあらわれた. テープ状, クリーム状, ゴム状製品でも粉末状製品につぐ細胞毒性を示した. さらに, 浸漬法では各製品にわずかの細胞毒性が認められたものの, いずれもその程度は軽微であった. また, 細胞種間ではGin-1細胞で高い細胞回復度の傾向が認められた. 以上の結果を材料の組成ならびに形状および試験法の観点から考察した. 今回のin vitroにおける結果を直ちに臨床に応用できないのは当然であるが, 今後, 義歯安定剤の開発にあたっては, 本実験結果をはじめとする生物学的な面からの考慮がはらわれるべきである.

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© 1990 大阪歯科学会
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