2023 年 22 巻 p. 38-50
目的:オキサリプラチンをベースとし, カペシタビンを含む化学療法を受ける大腸がん患者の手指に生じる末梢神経障害の特徴を明らかにする.
方法:地域がん診療連携拠点病院の外来で化学療法を受ける患者54人を対象に横断的観察研究を行った. 病態と治療情報を診療録から収集し, 手指のしびれ痛み, 触覚感受性, 握力, ピンチ力, 箸を閉じる力, 箸でつまみ上げる力を計測し, 生活習慣等は問診した.
結果:対象者全員が化学療法開始後から手指のしびれ痛みを経験し, うち43人は症状が慢性化しており, 示指の触覚感受性が低下していた者が28人いた. 触覚感受性と握力, ピンチ力, 箸でつまみ上げる力との間にはいずれも関連を認めなかったが, 触覚感受性が低下した者は箸を閉じる力が弱かった. 触覚感受性に関わらず握力とピンチ力は男性が有意に高かったが, 箸を扱う力に性差はなかった.
結論:がん化学療法患者の手指に生じる末梢神経障害症状は, 慢性化したしびれ痛み, 指先の触覚感受性低下, 箸を使う等の精緻な指の動作時の筋力低下を特徴としていた.