日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
秋田県における水稲あきたこまちの育苗箱全量施肥と密植を用いた無効分げつ抑制栽培技術による登熟期の高温少照条件下の白未熟粒の軽減
三浦 恒子進藤 勇人
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2022 年 91 巻 1 号 p. 67-75

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抄録

東北北部に位置する秋田県でも登熟期の高温による品質低下が1999年,2010年,2019年に問題となった.高温登熟における対策技術として移植の晩期化や,高温登熟耐性品種は活用場面が限られ,現行の作期および品種における対策技術が求められる.そこで,2007年と2010年に秋田県の主要品種であるあきたこまちの育苗箱全量施肥と密植による無効分げつ抑制栽培を,全層施肥基肥と追肥による慣行栽培と比較した.さらにビニルハウスを用いて登熟気温を最高気温で1.4℃~2.1℃上昇させ,整粒率低下要因の1つである白未熟粒の発生抑制技術として検討した.2007年は平年気温より気温は高かったが高温登熟条件ではなく,一方で日照時間が少なかった.2010年は気温が高く高温登熟条件となった.無効分げつ抑制栽培は玄米品質が高くなる主茎の第4葉~第7葉の基部から発生する1次分げつを高い有効茎歩合で確保し,密植による穂数確保で収量も維持した.また6月下旬から7月下旬および出穂期から成熟期までにおける葉色の低下が少ない傾向を,登熟期間中の出液速度は大きい傾向を示した.精玄米の白未熟粒率は慣行区を100としたときに高温処理なしで83,高温処理ありで80に,有意差はないものの減少した.また精玄米重,玄米タンパク質含有率は同等であった.以上のことから,無効分げつ抑制栽培は,日照時間が少ない条件や高温登熟条件で白未熟粒発生が減少し,かつ収量低下が小さいことから,作期移動が難しい地域での有効な高温登熟対策技術であることが示された.

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