日本作物学会紀事
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水稲の生育制御を目的とした深水処理適期の検討(栽培)
大江 真道三本 弘乗
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2002 年 71 巻 3 号 p. 335-342

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抄録

深水処理を実用的な生育制御技術として現行の水稲栽培体系に組み込むには,処理の適期を確定することが重要である.本実験では生育制御のための深水処理の適期を確定するために,分げつ期に4つの深水区(A区:分げつ開始期~分げつ盛期,B区:分げつ初期後半~最高分げつ期直前,C区:分げつ盛期~最高分げつ期,D区:最高分げつ期直前~節間伸長始期,水位:処理時の完全展開葉葉鞘先端の3cm上,処理期間:16日間)を設定した.深水処理の効果は時期によって異なり,早期と後期の処理(A,B,D区)では弱小分げつの出現抑制の効果は劣り,有効茎歩合は大きく高まらなかった.しかし,C区では,対照区(水深約5cm)に比べて有効茎歩合が26ポイント高まり,また,穂長と1穂重の増大も認められた.倒伏に関連する稈基部の二つの伸長節間の直径は,B~D区で対照区よりも太くなったが,挫折強度は必ずしも高まらなかった.特にD区では,両節間とも対照区に比べて20%太くなったが,その強度はそれぞれ20%,24%低下した.この低下は破生通気腔の発達によるものと考えられた.以上の結果から,分げつ盛期から最高分げつ期が弱小分げつの抑制に効果的な深水処理時期で,また収量性の向上にも貢献することから生育制御の適期と考えられた.しかし,その前後の時期は生育制御の効果が小さく,特に後期の処理では節間の挫折強度が劣ることから考えて倒伏抵抗性が低下する危険性も示唆された.

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