2020 年 35 巻 4 号 p. 557-563
[目的]本研究は歩行変数の加齢変化の様式とタイミングを調べ,高齢者の歩行を調整の観点から解釈することを目的とした.[対象と方法]8年にわたる全6回の測定に3回以上参加した65歳以上の高齢者53名を対象者とした.5 m歩行テストによる最大および自由歩行速度,10 m歩行テストによる自由歩行の重複歩距離,歩隔,重複歩距離の変動係数(CV)を調べた.[結果]加齢に伴い,最大および自由歩行速度は低下,重複歩距離は減少,重複歩距離CVと歩隔は増大した.自由歩行速度の低下に先立ち,重複歩距離は減少した.歩隔や重複歩距離CVの増大は他の変数より遅れて現れた.[結語]歩行変数の加齢変化は解釈可能な時間的順序性を示すことから変数間で自己調整されていると推察された.