1983 年 8 巻 4 号 p. 419-428
Mycobacterium sp. の洗浄菌とPCPを無機塩溶液中で培養すると, 培養液中にすでに報告した pentachloroanisole (PCA) と tetrachloro-1,4-dimethoxybenzene (TCHD) のほかに, 新たに代謝物として tetrachlorocatechol (TCC), tetrachlorohydroquinone (TCHQ), tetrachloro-2-methoxyphenol (TCCM), tetrachloro-4-methoxyphenol (TCHM), および tetrachloro-1,2-dimethoxybenzene (TCCD) の生成を確認した. この洗浄菌によってTCHQはTCHMを経てTCHDに変化し, TCCはTCCMを経てTCCDに変わることを確かめた. これらの結果から, PCPは Mycobacterium sp. によっておもにメチル化されるが, 同時に一部はオルトあるいはパラ位の水酸化とそれに次ぐ段階的メチル化を受けて代謝される経路を提示した. この代謝におけるメチル化の最大速度はpH 6.5と7.0の間に認められたが, 水酸化はpH 6.0以下に最大速度を示した. また, 培養液中への栄養物質の添加はメチル化の速度を著しく増大させ, このような条件下ではPCAのみしか検出されず, 水酸化による代謝物は認められなかった. PCAの Mycobacterium sp. と稲の発芽種子に対する毒性を調べたが, PCPに比べ著しく低かった.