1983 年 8 巻 3 号 p. 339-346
密閉系での dimethoate (DIM) の熱分解速度は, 開放系よりも速く, これは fenitrothion (SMT) の熱分解の場合にも認められた現象であるが, その密閉系と開放系との差はSMTの場合ほどは大きくなかった. 次のような自動触媒的熱分解機構を提唱した. まず, S-メチル異性化が起こり, 次いでS-メチル体が分解してジメチルスルフィドガスを生成する. 生成ガスと, DIM分子中のカルバモイル基とがS-メチル異性化を加速する. したがって, ジメチルスルフィドの触媒的役割は, これのみが関与するSMTの場合と比較して相対的に低い. DIMの熱安定化を4-methyl-2-t-butylphenol との付加, およびβ-シクロデキストリンへの包接化によって達成しこの安定化機構についても考察した.