産業衛生学雑誌
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原著
市販ガス捕集管の粒子捕集特性
畑 光彦 古内 正美ソク ピシットアミン ムハマド梅原 祐人高尾 将志東久保 一朗今中 努志鈴木 義浩中村 亜衣山崎 正彦
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2022 年 64 巻 4 号 p. 186-197

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抄録

目的:ガス捕集管は,有害ガス成分を細いガラス管内に充填された活性炭やシリカゲルなどの捕集剤粒子の表面に捕集し,作業環境中有害ガス成分の評価に使われる重要な器具である.現在半揮発性成分の多くは,ガス状または粒子状の存在割合に従って,ろ過捕集方法と固体捕集方法のいずれかで評価されており,その両方を併用する物質はわずかである.このため,半揮発性成分を固体捕集方法で捕集する際に,粒子状成分が捕集剤を通過することで,着目成分の濃度を過小評価する可能性がある.この問題点を検討するため,現在市場にある17種類のガス捕集管製品のエアロゾル粒子捕集性能と圧力損失を合わせて評価した.対象と方法:ガス捕集管の粒子捕集率を測定するためには,エアロゾル粒子モニタの流量に合わせた精密な流量制御と希釈が必要だが,小流量・高圧力損失のガス捕集管では,ろ材通過流量がエアロゾル粒子モニタの吸引流量よりずっと小さいため,一般的なフィルタろ材の試験方法が使用できない.そこで,圧力損失を基準とした流量制御と希釈を組み合わせた粒子捕集率測定法を開発した.そして,得られた粒子径別捕集率の測定結果に対して,2種類の粒子径分布と5種類の捕集条件を仮定して,質量基準総捕集率を推算した.また,コールタールピッチ取扱作業現場で測定された多環芳香族炭化水素(PAHs)16成分の結果から,半揮発性成分をガス捕集管で測定する場合に考えられる懸念について考察した.結果:エアロゾル粒子の捕集は,ガラスウール,捕集剤粒子充填層,そしてポリウレタンフォームのどの部分でも発生しており,その捕集特性は,エアフィルタや粒子充填層フィルタのような,粒子径 0.1 μm以下と 1 μm以上の範囲の捕集率が高く,0.2–0.3 μm付近が低くなる典型的な傾向を示した.このことから,エアロゾル粒子の捕集には,慣性,拡散,重力,さえぎりなどの粒子捕集機構が働いているものと推察された.考察と結論:PAHsのような粒子状・ガス状が混在する成分の質量基準総捕集率を検討し,多様な作業環境で発生しうる過小評価を防ぐため,ろ過捕集方法と固体捕集方法の併用の必要性を指摘した.

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© 2022 公益社団法人 日本産業衛生学会
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