2021 年 46 巻 1 号 p. 27-32
目的:人工膝関節全置換術(以下TKA)の際,人工関節の固定はセメントレスで行っているが,骨粗鬆症が強い場合,骨セメント固定を選択せざるを得ない.Computed tomography(以下CT)で脛骨近位部のCT値を調べ,骨密度が推定できるか検討した.
方法:2017年6月より翌年9月までにTKAを行い,CT検査と骨密度(bone mineral density以下BMD)検査を行った125膝を対象にした.セメントレス固定が110膝,骨セメント固定が15膝だった.脛骨骨切り面のCT値と,腰椎と大腿骨頸部のBMDを測定した.
結果:CT値の平均は75.5であった.腰椎BMDとCT値の相関係数は0.61,大腿骨頸部BMDとCT値の相関係数は0.69であった.セメントレス固定群の平均CT値は80.5,骨セメント固定群は39.4で有意差があった.
考察:脛骨近位部のCT値と大腿骨頸部のBMDはよく相関していた.従来よりCT値とBMDは相関しているとの報告は多いが,この結果からCT値はBMDと相関し,固定法の判断の指標になることが分かった.
結語:脛骨近位部のCT値は固定法の選択に役立つ.