地球科学
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ユーラシア大陸北東縁辺部の新生代火山活動 ―北海道周辺火山岩の岩石学的性質とテクトニクスとの関連―(<特集>北西大平洋縁辺地域の新生界)
岡村 聡
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2003 年 57 巻 6 号 p. 365-373

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抄録

ユーラシア大陸北東縁辺部に位置する北海道は,新生代になって日本海とオホーツク海という2つの背弧海盆の形成テクトニクスを経験し,本地域で生じた火山活動は,これらのテクトニクスに呼応して大陸縁辺から島弧へと活動環境を変えていった.背弧海盆を隔てたシホテ・アリンーサハリン地域と北海道を総合して比較検討すると,マグマの起源物質はエンリッチな大陸性リソスフェアから枯渇したアセノスフェアヘと変化し,背弧海盆,特に日本海盆の形成にともなって,マントル物質の改変が生じたとみられる.このマントル改変は,中国大陸内部で生じた深部マントル由来のアセノスフェアの上昇と大陸縁辺への水平流動によって生じ,背弧海盆の形成はこの水平運動によってトリガーされた可能性がある.中央-東部北海道の新生代火山岩は,通常の島弧火山岩には見られない高Ti安山岩,アイスラングイトおよびアダカイト質火山岩を含んでいる.これらの火山岩が生ずる原因は,エンリッチな大陸性リソスフェア,無水条件での結晶分化作用,スラブ溶融を引き起こす高温マントルの存在など,現在北海道で生じている通常の島弧火山活動とは異なる生成条件を想定する必要がある.また,当地域のテクトニクスを解明するためには,これらの火山活動と背弧海盆の形成がどのように関わっているのかを明らかにする必要がある.

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© 2003 地学団体研究会
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