地球科学
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福島県相馬市松川浦の干潟における底生生物とその生痕
松川浦団体研究グループ
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2003 年 57 巻 1-2 号 p. 31-48

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抄録

福島県相馬市松川浦のA〜Fの6調査地点において,干潟に生息する底生生物群集の構成内容とそれらの生物による表生痕と内生痕を調べた.A〜Eの5地点で枠法による底生生物の調査を行い,調査地点ごとの生物現存量,個体群密度や共存状態を明らかにした.確認した生物は32種で,底生生物群集は調査地点により異なり,D・E地点では,他の3地点に比べて種数が少ない.各調査地点に生息する優占種で分けた底質表面の分帯ごとに見ると,コメッキガニ帯では現存量が少なく,チゴガニ帯,ヤマトオサガニ帯と生息域が低くなるにつれ現存量が多くなる.生物ごとの生痕について,巣穴開口部とその周辺,掘り出し痕と摂食痕,垂直断面の形態,管壁と裏打ち物質,底質との関係などを明らかにした.また,個々の生痕だけでなく,ヤマトオサガニとアシハラガニ,コメッキガニとチゴガニなど形が似た巣穴の比較,個体群密度の違い,チゴガニ-アシハラガニ帯でのチゴガニの巣穴の変形,チゴガニ-ヤマトオサガニ帯での個体群密度,管壁の裏打ち物質の有無等を明らかにし,生痕群集断面の概念図を作成した.生痕の部位(開口部,裏打ち物質.掘り出し痕,摂食痕)と周辺の底質に含まれる珪藻群集を分析し,生物の活動を示唆する結果を得た.

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© 2003 地学団体研究会
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