神経幹細胞からの神経細胞の産生 (神経新生) は, 胎児期に爆発的に生じるが, その後も生涯にわたり海馬などの脳の一部では維持される. 生後の神経新生は外界の影響を受けやすく, 自発運動によって向上したりストレスによって低下したりすることがモデル動物において知られている. われわれは神経新生の低下と, 統合失調症などのエンドフェノタイプとみなされるプレパルス抑制テストの低下の間に因果関係を見い出し, 幼若期の神経新生低下が成体になってからの感覚ゲート機構や不安に大きくかかわることを明らかにした. われわれは神経新生が精神神経疾患の治療や介入のターゲットになりうるのではないかと考えている. 今後, 神経新生やグリア新生の様態についての解析が進むことにより, 精神疾患発症予防におけるレジリエンスの理解につながることが期待される.