キュブラー・ロスの示した「死に向かう人の心理過程」は,モーツァルトのレクイエムの曲構成そのものである.この心理反応は死に向かうときばかりでなく,ごく普通の臨床場面でも遭遇する.神経症者の葛藤,パーソナリティ障害や適応障害の症状形成,摂食障害の強迫性,現代型うつ病にみる他罰的反応,軽症化した統合失調症など,その視点で焼き直すと,5段階の心理反応のどこかのステージに位置していることがわかる.本稿では「女性の心身相関」において,この変化する心理反応がどのように心身の症状形成にかかわっているか検証した.特に急性精神病,なかでも女性に多い非定型精神病に焦点を当てた.そして「女性・性」のもつ周期性,それが機動力になっていると思われる,自己治癒力に注目した.隣接するカタトニアの世界から「分け隔てる力」を「女性・性」がもっている.症状形成を極性と周期性でみてとると,振動性と波動性に支配されている.「女性・性」はその波長を調整する力をもっているのではないかと考えた.