2012 年 52 巻 12 号 p. 1137-1145
対人援助職支援としてフォーカシングを用いた試みを行い,対人援助場面における体験を吟味することがどのような特徴をもった支援となるのかを考察し,その有益性を検討した.フォーカシングとは特定の気がかりや状況についての,まだ言葉になっていないが,からだに感じられる漠然とした感じ-フェルトセンス-に注意を向けかかわっていく過程である.某製造企業に勤務する産業保健師を対象者としてフォーカシング・セッションを行い,セッションの逐語記録や内省報告を検討した結果,(1)個別的対応の有効性,(2)被援助者のプライバシーに配慮しつつ対人援助職本人の支援が可能であること,(3)聴いてもらうという支援,(4)被援助者に対する理解やかかわり方の変化の促進,(5)対人援助職の自己理解の促進,の5つの特徴が考察され,バーンアウト予防などフォーカシングが対人援助職の心身の健康保持などに有益であることが示唆された.