2002 年 29 巻 1 号 p. 14-18
歩行動作に関連させた股関節外転筋力の指標を得ることを目的として,股関節内旋・外旋位と股関節屈曲・伸展位を組み合わせた股関節外転筋力を測定し,それぞれの肢位における筋力値どうしを比較した。対象は健常な女性12名(平均年齢20.8 ± 0.6歳)である。最大等尺性股関節外転筋力測定における股関節の肢位を①屈曲外旋位,②屈曲中間位,③屈曲内旋位,④伸展外旋位,⑤伸展中間位,⑥伸展内旋位の6条件とした。被検者にはベッドに背臥位または腹臥位となってもらい,非測定肢と骨盤をベルトで固定した。各肢位で股関節0゜〜5゜外転位での外転筋力を測定した。その結果,屈曲外旋位の外転筋力は伸展外旋位以外のすべての外転筋力よりも有意に低く,伸展外旋位の外転筋力は伸展内旋・中間位よりも有意に低かった。原因として,股関節外旋位になると大転子は大腿骨頸部前捻によってさらに後方に移動して下肢の外転運動の方向と外転筋群の収縮方向が異なることと,逆に中間・内旋位では大転子は前方に移動して外転運動の方向と外転筋群の収縮方向がほぼ等しくなることを考えた。PNFの運動促通パターンでは伸展―外転―内旋と屈曲―外転―内旋パターンといった具合に,常に外転と内旋を組み合わせている。つまり,内旋を組み合わせた外転筋力は筋張力発揮に有利であったともいえる。