アレルギー
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アトピー性皮膚炎患者におけるトシル酸スプラタストの抗アレルギー作用と臨床効果との相関の検討
須藤 一光石 幸市平嘉 也子内田 隆文海野 哲史吉池 高志高森 建二小川 秀興
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2000 年 49 巻 12 号 p. 1163-1172

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抄録

アトピー性皮膚炎患者101例を対象にトシル酸スプラタスト300mg/日を8週間投与し, 治療前後におけるアトピー性皮膚炎重症度スコア(顔面部・四肢部・体躯部の各部位における部位別重症度スコアの合計+〓痒度スコア), 末梢血好酸球数, 血清総IgE値, 血漿eosinophil cationic protein(ECP)値, およびその他の免疫学的パラメータを観察し, 比較検討を加えた.その結果, 1)トシル酸スプラタスト投与後に, 全ての部位における部位別重症度スコアならびに〓痒度スコアは経時的な改善をみとめ, 投与2・4・6・8週後のいずれの観察時期においても投与前に比して有意な低下(p<0.01)を示した.さらに, アトピー性皮膚炎重症度スコアもいずれの観察時期においても投与前に比べ有意な低下(p<0.01)を示した.2)調査薬剤の投与による副作用の発現はなく, 血液生化学的検査所見でGPT値上昇, 総ビリルビン値の上昇がそれぞれ1例認められた.また, 尿検査(定性)において尿蛋白陽性例が1例認められた.3)免疫学的パラメータを含む臨床検査の実施は平均で8.68±0.36週目に行われ, 末梢血好酸球数, 全白血球中好酸球百分率, 血漿ECP値は投与前に比べ投与後には有意な低下を示したが, 血清総IgE値とLDH値には有意な低下を認めなかった.4)今回の検討にエントリーした全症例を重症度スコアが5以上改善した群"a)改善群"と5未満改善群(悪化も含む), "b)非改善群"の2群に分け, 群間で免疫学的パラメータの変動(投与後値-投与前値)を比較した.その結果, a)改善群では血漿ECP値において有意な減少(p=0.02)を認め, 末梢血好酸球数で減少傾向(p=0.091)を認めた.一方, 血清総IgE値, LDH値では有意な減少(傾向)は認めなかった.以上の結果より, トシル酸スプラタストの重症アトピー性皮膚炎患者の治療における有効性と安全性が確認され, また, アトピー性皮膚炎の重症度に対し, 末梢血好酸球数および血漿ECP値が指標となる可能性が示唆された.

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© 2000 日本アレルギー学会
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