1970 年 19 巻 9 号 p. 718-722,729-73
減感作療法において, 使用される抗原液の特異性の高低と治療効果の関係を究明する目的で, ホヤ喘息306例をホヤ抗原液を用いて減感作し, 一般の気管支喘息292例を家屋塵抗原液により減感作して, その治療効果を比較した.えられた成績は次のごとくであつた.1.ホヤ喘息306例においては, 著効 160例, 有効 123例, 有効率92.5%であつたが, 気管支喘息では, 292例中著効 138例, 有効88例, 有効率77.3%であつた.2.治療効果があらわれるまでの期間は, ホヤ喘息の方が気管支喘息より短かかつた.3.ホヤ喘息においては, 患者の年令, 発病年令, 発病後の経過年数などと治療効果の間に, 特別の関係をみなかつたが, 気管支喘息では, 10才以下, 40才以上, 高年発病者などでは, 有効率が低率であつた.4.減感作療法を数年間続けた場合, ホヤ喘息では治療効果の動揺が少なかつたが.気管支喘息では年ごとの有効率にかなり変動がみられた.5.減感作療法実施後に脱ステロイドできた症例は, ホヤ喘息の方が気管支喘息より多かつた.6.減感作療法より喘息症状の誘発されたものは, ホヤ喘息の方が気管支喘息より多かつた.減感作療法においては, 特異性の高い高原液を使用した方が治療効果を高めると思われるので, 真の原因抗原を発見して治療を行なうよう, 努力する必要があることを強調した.