沙漠研究
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小特集
家畜ふん尿をリン資源として活用
羽賀 清典
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2023 年 32 巻 4 号 p. 149-155

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抄録

国内にリン資源を持たないわが国では,利用したリンを回収・再利用することが重要視されている.年間8,000万t余り排出される家畜ふん尿中のリン賦存量は11-19万t/年であり,リン資源としての活用方法には,堆肥,焼却灰,汚水からのリンの回収物の3つがある.堆肥中のリン酸濃度の平均値は乾物当たり,乳用牛が1.8%,肉用牛が2.5%,豚が5.6%,採卵鶏が6.2%,ブロイラー4.2%であり,大家畜の牛に比べて中小家畜の豚と鶏の堆肥にリン酸は多く含まれている.鶏ふん焼却灰には約9%のリンが含まれ,肥料メーカーに販売されなどして活用されている.汚水を曝気することによって溶解度の低いリン酸アンモニウムマグネシウム(MAP)の結晶として回収することができる.以上,回収・再利用される可能性のあるリンの量は,家畜ふん堆肥の肥料成分としてのリンが15万t,鶏ふん焼却灰に含まれるリンとして1.2万t,豚舎汚水からMAPの結晶として回収されるリンが約1万tと推計され,合計17.2万tとなった.この量は家畜ふん尿のリンの量11-19万tの範囲に入った.家畜排せつ物由来のリンを有効に活用することによって,海外からの輸入に頼っている天然リン資源を節減し,持続的な資源リサイクルへの貢献が大きいとものと考えられる.

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© 2023 日本沙漠学会
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