聖マリアンナ医科大学雑誌
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原著
HBs抗原低値かつHBコア関連抗原高値はB型肝炎ウイルス関連肝細胞癌の高リスク因子である
五十嵐 洋介渡邊 綱正服部 伸洋松本 伸行奥瀬 千晃得平 卓也鈴木 達也池田 裕喜高橋 秀明松永 光太郎鈴木 通博安田 宏伊東 文生
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2019 年 47 巻 3 号 p. 135-151

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抄録

目的:血中B型肝炎ウイルス(HBV) DNAレベルは慢性HBV感染患者の管理に重要かつ独立した肝細胞癌(HCC)の予測因子とされるが,核酸アナログ療法中は血中HBV DNA量が抑制されるため評価は限定的である。HB表面抗原(HBs抗原)とHBコア関連抗原(HBcr抗原)は各々が肝細胞内のHBV複製能力を反映したHCCのバイオマーカーであり,今回はそれら二つのマーカーの組み合わせと発癌リスクとの関係性に関して当施設の症例を用いて検討した。
方法:慢性HBV感染の患者444人を対象に,HCCに対するHBs抗原及びHBcr抗原の関連性について,横断的ならびに縦断的に検討した。
結果:横断研究では,HBe抗原陰性患者におけるHBs抗原とHBcr抗原のカットオフをそれぞれ3.5 Log IU/mL,4.9 Log U/mLとしたとき,HCC発病はHBs抗原低値群(p=0.017)とHBcr抗原高値群(p=0.040)が有意に高率であった。また,HBs抗原とHBcr抗原を組み合わせた後に比較検討を行うと,HBs抗原低値及びHBcr抗原高値群が最もHCC歴が高く(odds ratio [OR], 5.40; p<0.001),核酸アナログ療法の関与は認めなかった(OR, 5.71; p=0.012)。これはHBe抗原陽性患者でも同様の結果であった。さらに374例のHCC既往のない患者群に対して新規HCC発症に関する縦断研究を行ったところ,最も発癌率の高い群はHBs抗原低値かつHBcr抗原高値の群であった(OR, 3.55; p=0.006)。
考察:当施設の症例を用いた横断的・縦断的研究により,HBs抗原低値かつHBcr抗原高値の患者群がHBV関連HCC発症の高リスク群であることが示され,特に核酸アナログ療法中におけるHBs抗原及びHBcr抗原はHCCリスクに対する優れたバイオマーカーであることが示された。

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© 2019 聖マリアンナ医科大学医学会
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