聖マリアンナ医科大学雑誌
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症例報告
門脈圧亢進症に起因した上腸間膜静脈血栓症により,小腸壊死をきたした1例
小倉 佑太大島 隆一國場 幸均岸 龍一小林 博通相田 芳夫大坪 毅人
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2018 年 46 巻 1 号 p. 17-23

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抄録

症例は64歳の男性,21年前にアルコール性肝硬変と診断されていた。受診1週間前から腹痛が出現し,受診当日腹痛の増悪および下痢,嘔吐症状が出現したため,前医より当院へ救急搬送となった。身体所見上は,左腹部を中心とした圧痛・自発痛を認め,腹部全体に筋性防御,反跳痛を呈していた。腹部造影CT上,門脈から上腸間膜静脈内に血栓を伴っており,また,回腸に一部造影効果不良域を認め,腸間膜の浮腫性変化を伴っていた。以上より上腸間膜静脈血栓症および腸管虚血の疑いと診断し緊急手術を施行した。手術所見は,回腸末端部より80 cmの部位が約40 cmにわたって暗赤色変化をきたしていたため,小腸部分切除を行った。病理組織学的には全層に出血,粘膜壊死,粘膜下層の浮腫性変化が認められ,小腸壊死と診断された。術後経過は良好で第5病日に食事を開始し,第21病日に軽快退院となり,現在術後3ヵ月経過したが,再発なく経過観察中である。

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© 2018 聖マリアンナ医科大学医学会
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