ソシオロジ
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論文
ハイブリディティと不平等
――N・ガルシア=カンクリーニにおける文化と社会――
白石 真生
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2017 年 61 巻 2 号 p. 3-20

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抄録

本稿の課題は、N・ガルシア=カンクリーニの理論においてヘゲモニー論と再生産論がどのように接合されているのか検討することである。その接合によって可能となるハイブリディティ概念と社会文化的不平等の内在的連関を取り出すのが本稿のねらいである。 第1節では、ハイブリディティの理論に加えられた主要な批判を検討することで本稿の目的を設定する。第2節では、ガルシア=カンクリーニの民衆文化の規定がその両義性を主題化するものであり、民衆文化の両義性とハイブリディティの間には内在的連関があることを明らかにする。第3節では、グラムシのヘゲモニー概念から民衆的主体の主体位置の重層性と両義性がいかにして引き出されるのか検討する。第4節では、ヘゲモニー概念がいかにしてハビトゥス概念と接合されるのか明らかにする。この接合によって、消費という実践やその実践の行われる状況のはらむ偶然性と非決定性が、構造的変容の契機に転化される。第5節では、ヘゲモニー論と再生産論がラテンアメリカの民衆文化というガルシア=カンクリーニ固有の文脈に置かれることでどのように再構成されているのか検討する。その再構成によって民衆文化の社会変容のポテンシャリティが引き出される。第6節では、再生産論とヘゲモニー論の接合によって、文化と社会の関係がどのように再定式されるのかを論じる。ともに文化と社会のリンクを定式化するヘゲモニー論と再生産論の結合は、実践における社会変革の契機を同定する。

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