2016 年 40 巻 p. 19-25
大学の使命は研究と教育である。社会に貢献できる研究を続け,社会に役立つ人材を育成する必要がある。そのためには,それらを享受する資質のある「エリジブル」な学生に対し入学試験,講義,フィールドワーク,専門的なゼミでの研究への「アクセスビリティ」を確保する必要がある。障がいには「見えやすい」ものと「見えにくい」ものがあり,本学では身体障がいについては,これまでも様々な対応がとられてきた実績がある。一方で,学習障がいや注意欠如障がい,自閉症スペクトラム障がいのように「見えにくい」場合,「怠学」や「性格」として理解されやすく包括的な支援を受けることが難しかった。早稲田大学では,教務部と学生部が協力して「学修上の問題を抱える学生」への対応を充実させるのと同時に,文部科学省の研究委託事業を通じて全学的な組織づくりを試みた。本稿では,法律の整備に合わせて私立大学がどのように全学的に「合理的配慮」の準備を行ってきたかについて解説する。