2020 年 40 巻 1 号 p. 10-11
1. 研究目的
平成30年に改訂された,第3期がん対策推進基本計画(平成30年3月閣議決定)においては,「全国がん登録や院内がん登録によって得られるデータと他のデータとの連携により,より利活用しやすい情報が得られる可能性がある(後略)」とされており,「別に収集されているがんのデータ等との連携について,個人情報の保護に配慮しながら検討する」とされている.また,「がん研究10か年戦略の推進に関する報告書」(平成31年4月)においても,「がん登録データの効果的な利活用を図る観点から個人情報の保護に配慮しながら,がん登録とレセプト情報等,臓器や診療科別に収集されているがんのデータ等との連携について研究を進めるべきである」とされている.
本研究はその方向性を実現するために,院内がん登録とDPCデータを軸として,ほかのデータとリンクをすることを試行し,その課題を同定しつつ解決策を検討し,システムを拡充することでより有用なデータベースの構築の基礎を作ることを目的としている.
院内がん登録にDPCをリンクさせる試みは,本研究の研究者らが,すでに,都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会がん登録部会と連携し,がん診療連携拠点病院において院内がん登録とDPCデータをリンクして様々な標準診療実施率の算定・施設フィードバック等の研究を行ってきた.これは,現在,国立がん研究センターにおける研究・事業として進行しており,標準治療の実施率を集計して各施設に対してフィードバックが行われている.そのようなデータ突合と共有の経験を踏まえ,その知見をほかのデータ源に対して拡張することが本研究の企図である.