医療情報学
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原著
診療録開示における倫理的側面を含む意向調査 —主として医療職者の側,患者の側,企業職員の側との比較分析—
天野 寛藤原 奈佳子宮治 眞加藤 憲勝山 貴美子小林 三太郎山田 和雄後藤 健之大坪 牧人
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2008 年 28 巻 4 号 p. 197-211

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抄録

 診療録の開示は,最近の電子カルテシステムの進展により,新たな局面を迎えつつある.これまでに筆者らは,診療録開示に関する患者の意向,合わせて医療職者の意向をアンケートによって調査し,診療情報提供のあり方を検討してきた.今回は,倫理的側面の課題を含んだ診療録開示の問題について分析を試みた.調査対象者は,患者が715名,医療職者が619名,企業職員が126名であった.結果は,患者,医療職者,企業職員との間に意見の違いがみられた.たとえば,診療録の開示が進むと,医師は患者に見てほしくない情報を診療録に記載しなくなるが,それについてどう思うか,という設問に対して,「仕方がない」と判断した回答の割合は,医師65.9%,看護師55.6%,企業職員37.9%,外来患者35.5%,入院患者34.8%であった.診療録は開示が原則であるが,倫理的側面を含んだ課題を一律に論ずることは困難である.今後,電子カルテシステムの技術的対応とともに,診療録の開示は,チーム医療,地域医療,さらに社会の動向を見据えた対応方法が不可避であると考えられる.

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© 2008 一般社団法人 日本医療情報学会
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