医療情報学
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原著
ワイヤレスモバイルセンサによる移送時呼吸停止警告システムの開発
大橋 久美子冨田 浩史渡辺 嘉二郎田中 博
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2006 年 26 巻 1 号 p. 33-40

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抄録

 安全で安心な医療に対する社会的な関心が高まるなかで,人的な医療過誤対策だけでは,解決できない医療現場の安全性を確保するためには,モバイルセンサやワイヤレスネットワークなどのユビキタス情報技術を利用した医療安全対策が必要である.そこで本研究では,病院内でのストレッチャーによる患者の移送中に,患者の呼吸状態の異変を早期発見し,医療従事者に警告するワイヤレス呼吸停止警告システムを構築した.このシステムは,無侵襲に患者の呼吸・心拍の振動成分を計測するエアマット型生体情報モニタシステムを基本技術として用い,特に患者呼吸停止の検出を目的とする.本システムを用いて試行実験を行った結果,ストレッチャーでの移送中においても患者の呼吸数を計測可能で,呼吸停止警告システムとして十分有効であることが判明した.しかし,今回の実験では健常者による評価実験であり,呼吸状態が不安定な患者にも適合できるよう,検出感度を高く設定し,検出周波数の範囲を拡大するなどの調整が必要である.また,移送に伴う振動ノイズの影響など課題もあり,今後臨床応用に向けてさらにシステムの最適化を図る必要があると示唆された.

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© 2006 一般社団法人 日本医療情報学会
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