基礎心理学研究
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視覚系のパタン処理機能の発達とその生理学的基礎 : X・Y細胞によるモデルの可能性
佐藤 隆夫
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1982 年 1 巻 2 号 p. 101-113

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抄録

近年の視力・CSFに関する乳児精神物理学的研究の進展,ネコを用いた視覚系の細胞レベルでの発達研究の進展によって人間の視覚パタン処理機能の発達を生理学的レベルから整理検討することが可能になって来た.ここでは乳児のCSFの発達を網膜神経節・外側膝状体におけるX・Y細胞の発達と関連づけて検討することを試みた.乳児の視覚機能の発達に関して生後1-2ヶ月の時期に質的な変化が生起することは従来から指摘されて来たところであるが,これはCSFの発達に関しても認めることが出来る.CSF発達上の不連続は従来言われていたような中脳(上丘)視覚系から主視覚系(外側膝状体-視覚皮質系)への機能主体の移行として捉えるよりは,主視覚系内部の,特にX細胞系の急速な成熟と関連づけて考えるべきことと筆者には思われる.一方,Y細胞に関してほ生後2-3ヶ月間は機能していないことを示唆する事実を見出すことができる.次に人間の視力発達過程に関して,行動的方法(PL法)および生理学的方法(VEP法)によって推定されるものが大きく食違うという問題を論じた.人間とネコにおける行動・細胞レベルでの発達研究を比較検討した結果,人間の視力発達の指標としては行動的視力の発達過程がより妥当なものと筆者は考えた.しかしながら,パタン視機能の発達の神経的基礎を考える上で欠落している情報もまだ多い.とりわけ,乳児のCSFおよびネコの細胞レベルのCSFに対する時間周波数の影響,Y細胞の発達(特に細胞レベルでのCSF),ネコの行動的CSFの発達などに関する研究の進展が望まれる.

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© 1982 日本基礎心理学会
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