2021 年 36 巻 2 号 p. 203-208
本稿では,ラカトシュの可謬主義の見地から,数学の発展を弁証法的に解釈することの意義と課題について考察した.また,算数・数学教育において弁証法的発展を志向した授業を構想することが如何なる教育的意義を持ちうるか,前述の議論を踏まえながら検討した.そこでは,今日の算数・数学教育で重視される「数学的な考え方」の一側面や,教育課題についても触れながら,教育的意義として,先行研究で指摘されているものに加えて,⑴ 子どもの統合的な考察を促す,⑵ 教師の数学観の変容の二点を指摘した.また,具体的な学習場面についての検討から,弁証法的発展を志向した授業の構想が可能であることを示した一方で,弁証法的解釈の限界として弁証法的トリアーデでは捉えられない授業の局所的な側面があることについて指摘した.