1999 年 14 巻 3 号 p. 11-16
これまで, 熱と温度に関する学習者の理解の実態については, エリックソンの先駆的な研究以来繰り返し報告されてきており, 日常的なアイデアが学校理科での正式な授業を受けたにもかかわらず使用され続けることがある程度明らかにされきている。本研究においては, 新たにコミットメントの視点を加味しつつ, それら日常的なアイデアの使用に伴う自信の度合い(以後, 確信度と表記する)に注目し, 従来からなされてきている熱と温度についての学習者理解の実態を追試的に明らかにするよう試みた。主要な調査結果は以下のとおりである。・熱伝導の違いを問う課題では, 科学的に妥当な応答の適用頻度が小学1年から高校2年までのどの被験者グループでも80%以上の高い値を示している。・熱平衡状態における温度を問う課題では, 科学的に妥当な応答の適用頻度が学年進行に伴って全体的な右上がりの増加傾向を示す。しかし, 学年進行に伴う継続的な理科学習の効果があると言っても, 中学3年で約30%, 高校2年でも60%弱という値にとどまっている。・熱平衡状態における温度を問う課題では, どの学年段階においても科学的でない応答への確信度が, 科学的な応答への確信度を上回っている。これらの結果を踏まえて, 熱と温度に関する学習者の理解の実態と, それが理科教育に対して持つ意味を考察する。