本稿は,数学教育と理科教育との関係を,「対数」の学習に焦点を当てて考察するものである。「対数」は自然科学だけでなく,社会科学の分野においても幅広く使われているが,高等学校の「対数」指導では,証明や計算技能に焦点が当てられ,「対数」の意味理解などについては十分に目が向けられていないように考えられる。数学と理科との関係から「対数」指導について検討してみると,「数学史」への着目も重要であると考える。「数学史」では,「対数」が生まれた背景や積を和に捉え直す先人のアイデアを学習の対象とすることも大切であろう。ここでは「計算尺」などに目を向けた指導も考えられる。