本研究の目的は,自分自身でデータを読み,自分で考えて結論を出す力を身につけることを目指した数材を開発し,実践を通してその指導における示唆を得ることである。そこで,国民所得の階級幅が異なる度数分布衣のデータをもとにヒストグラムの高さが度数ではなく階級幅に対する密度を表していること考察させる教材開発を行った。実践の結果,次の2点が明らかになった。①実際のデータに基づき,政府報道の不況,経済格差という社会問題を考察させていくことにより,生徒は現在の社会を数学的に考えていくことの有用性が感じることができた。②国民所得の代表値を考察するにあたり,中央値は外れ値や分布の歪みに対して頑健(ロバスト)なものであり,分布の中心傾向を測るのには中央値が適切であるということを丁寧に扱うことが必要である。今後の課題として,実データの活用に対するさらなる工夫や,他教科との連携などのさらなる検討が必要である。