2021 年 70 巻 4 号 p. 785-790
電撃性紫斑病の契機となったNeisseria meningitidis敗血症を経験したので報告する。患者は80歳代女性。主訴は発熱,意識障害,高度の炎症反応上昇,右下腿の疼痛を伴う皮下硬結・発赤・紫斑,CTでは左上葉に浸潤影を認めた。下腿軟部組織感染症もしくは肺炎に伴う敗血症とし,Meropenem(MEPM),Vancomycin(VCM)が投与開始となった。来院時の血液培養および喀痰培養よりグラム陰性の双球菌が認められ,分離培養を行ったところチョコレート寒天培地に灰白色コロニーが発育した。グラム染色にてN. meningitidisを疑ったが,当院細菌検査室に髄膜炎菌抗原検査試薬を持ち合わせていなかった。同定検査を実施した結果はN. meningitidisと同定された。右下腿の皮下硬結・発赤・紫斑はN. meningitidis敗血症に伴う電撃性紫斑病と診断された。抗生剤はCeftriaxone(CTRX)へ変更となり,炎症反応の改善が確認された。N. meningitidisは検出頻度が低い細菌ではあるが,病原性の強さや臨床報告の迅速性が求められることを考慮すると,検査体制整備は急務であると考える。