医学検査
Online ISSN : 2188-5346
Print ISSN : 0915-8669
ISSN-L : 0915-8669
原著
ホルマリン固定後の剖検臓器を2-プロパノール保存することの有用性
榊原 健夫滝野 寿榊原 英一坂本 祐真濱嶋 由紀正木 彩子村瀬 貴幸稲垣 宏
著者情報
ジャーナル フリー HTML

2017 年 66 巻 1 号 p. 8-16

詳細
抄録

病理解剖で遺体から摘出された臓器は通常,ホルムアルデヒド溶液によって固定された後,ホルムアルデヒド溶液を新しく交換して保存される。固定後に病理診断用の組織ブロック作製に際し,臓器に含まれるホルムアルデヒド溶液を除去するために長時間の水洗が必要とされる。ホルムアルデヒド溶液を新しくする際や水洗不十分なホルムアルデヒド固定臓器をトリミングする際に,病理医や臨床検査技師へのホルムアルデヒド暴露の危険性がある。本研究では,ホルムアルデヒド溶液にて解剖材料を1週間固定後,2-プロパノール溶液で臓器を3ヶ月間保存した場合(AL法)と,ホルムアルデヒド溶液にて3ヶ月保存した従来法(FA法)と比較した。AL法は切出し室および臓器周辺の空気中ホルムアルデヒド濃度を有意に低減させ,ヘマトキシリン・エオジン染色標本の組織形態を維持させることが可能であった。また,AL法では免疫染色における抗原性の保持がFA法よりも一部の抗体においては良好であった。さらに,AL法は核酸保存性においてもFA法に比べ良好であった。以上から2-プロパノールを用いた臓器保存法(AL法)は,解剖臓器の保存に有用である。

著者関連情報
© 2017 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
前の記事 次の記事
feedback
Top