医学検査
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原著
末梢動脈疾患の診断・予後予測における赤血球容積分布幅の意義
倉田 貴規柴原 聡美宮島 悦子田中 伯香橋本 卓典牧 俊哉加藤 秀樹湯浅 典博
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2016 年 65 巻 1 号 p. 12-17

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抄録

【背景】近年,赤血球分布幅(RDW)が心筋梗塞,心不全,高齢者の予後と関連することが報告されるようになったが,末梢動脈疾患(PAD)の診断・予後とRDWとの関連について検討した研究は少ない。【目的】PADの診断・予後予測に関するRDWの意義を明らかにする。【対象と方法】対象は2009年から5年間に足関節/上腕血圧比(ABI)と血液検査(ヘモグロビン濃度(Hb),平均赤血球容積(MCV),RDWの測定)を行った40歳以上の患者2,046例である。ABIは左右の低い方の値を用い,0.90以下をPADとした。【結果】全症例の平均ABIは1.05 ± 0.17で,0.90以下(PAD)は288人(14.1%)であった。全症例の平均RDWは14.4 ± 1.7で,ABIとRDWにはy = –0.012x + 1.227(x: RDW, y: ABI, R = 0.125, p < 0.0001)と有意な相関を認めた。PAD患者群(PAD群)は非PAD患者群(非PAD群)よりも有意に年齢が高く,RDWが大きく,Hbが低かった。多変量解析では,年齢,RDW,HbはABI ≤ 0.90と関連する有意な独立因子であった。PAD群は非PAD群よりも有意に生存率が低かった。また,PAD群のうちRDW 15.1以上の患者は15.0以下の患者と比較して有意に生存率が低く,これは非貧血患者で顕著であった。【結論】RDWはPADの診断・予後予測に有用である。

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© 2016 一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
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