2007 年 67 巻 5 号 p. 444-447
経尿道的前立腺切除手術では, 電解質を含まない大量の灌流液で膀胱を灌流しながら手術を行う.そのため, 手術創から灌流液が血中へ吸収されると, 希釈性の低Na血症を発生する.本症はTUR症候群と呼ばれ, さまざまな症状を呈し, 放置すると重篤な病態に陥ることがある.今回著者らは, TUR-P手術中に著明な低Na血症を示したにも関わらず, 明らかな精神症状や不整脈等を示さなかったTUR症候群の症例を経験した.TUR-Pの手術中, 麻酔科医はバイタルサインの変化や自覚症状, 灌流液の使用量などから低Na血症発症を予測し, 発見が遅れないよう注意を払う必要があると考える.