昭和医学会雑誌
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放線菌多糖マンノグルカンの生物学的活性
三浦 春夫南雲 昇木村 賀津子阿部 志津子大久保 幸枝小松 信彦
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1986 年 46 巻 3 号 p. 399-405

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抄録

放線菌の1種Microellobosporia griseaが産生する多糖mannoglucan (MG, 分子量約90万) の酸分解産物DMG (degraded mannoglucan, 分子量約30万) を用いて, sarcoma180に対する抗腫瘍作用, 及び結核菌その他の細菌感染症に対する防御効果について実験を行なった.Sarcoma180細胞をマウスの皮下に移植し, その翌日からDMGの32mg/kgまたは100mg/kgを連日5回腹腔内投与し, 21日後に固形腫瘍を摘出して対照群の腫瘍重量と比較することにより, 70~80%程度の腫瘍阻止率を示した.腫瘍移植前または移植後の種々の時期にDMG100mg/kgを1回注射した場合にも有効であるが, 5~8日後に1回注射した場合の効果が最も顕著であった.一方, sarcoma180の腹水型腫瘍に対しては無効であり, DMGの効果は他の抗腫瘍多糖と同様に宿主媒介抗腫瘍作用によるものである, 次に, 人型結核菌の0.5~1mg/mouse量を静注し, その翌日からDMG20mg/kgまたは80mg/kgを隔日10回腹腔内注射することにより, 有意の延命効果が得られた.その際, 肺内結核菌数の推移を追跡すると, DMG投与群では感染後4週から6週にかけて, 肺19当たりの生菌数が対照群の1/80から1/30に抑制されていた.病理組織学的所見は, 対照群では滲出壊死型の肺病変を示すマウスが多かったが, DMG群では増殖肉芽腫型組織反応を示すものが多かった.また結核菌感染後21日目に, footpad法でPPDに対する遅延型過敏症反応の強弱を比較したところ, DMG投与群は対照群よりも反応が著明に亢進していた.このような組織学的変化や遅延型過敏症反応の亢進は, 細胞性免疫の活性化による感染防御能の増強と相関性があると考えられる.結核菌以外の諸種細菌による急性感染症に対する防御効果は, 黄色ブドウ球菌, 大腸菌, 緑膿菌, Proteus vulgaris, Serratia marcescensに対して認められたが, その他のグラム陽性または陰性細菌に対する効果は弱いか, または無効であった.ヒツジ赤血球を抗原としてマウスを免疫し, ヒツジ赤血球に対する脾の溶血プラーク形成細胞 (PFC) 産生に及ぼすDMGの影響を調べたところ, DMG投与群のほうが対照群よりもPFCの増加を示した.また塩化ピクリル塗布による遅延型皮膚反応に対しても, DMG投与は顕著な促進効果を示した.これらの結果から, DMGは免疫賦活剤の1種として, 広く食細胞系, 体液性免疫及び細胞性免疫を増強することによって感染防御及び抗腫瘍作用を発揮することが明らかにされた.

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