昭和医学会雑誌
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マウス腹腔マクロファージの化学発光産生に及ぼす諸種免疫賦活剤の効果
小松 安彦大久保 幸枝小松 信彦
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1986 年 46 巻 3 号 p. 377-382

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抄録

マクロファージがオプソニン化された細菌その他の外来異物と接触すると, 速やかにsuperoxide anionその他の活性酸素が産生され, これらがマクロファージの殺菌作用に重要な役割を演ずることが知られている.今回, 我々はSchizophyllan (SPG) その他の免疫賦活剤をBALB/c系マウスの腹腔内に1回注射した後, 経時的に採取した腹腔マクロファージをオプソニン化ザイモサンで刺激した際に生成する活性酸素量をルミノール発光法で測定することによって, 免疫賦活剤の投与がマクロファージの化学発光 (CL) に及ぼす効果について比較検討した.Native SPG (分子量: 約600万) を用いた場合には, 0.4~4mg/kg量をマウスに投与後24時間で採取したマクロファージのCLが最も高い値 (対照群マクロファージの約2倍) を示したのち漸減した.これに対し, 超音波処理で低分子化したSPG (分子量: 45万) の場合には, 0.04~4mg/kgを投与後1時間をピークとして対照群の約2~3倍の上昇を示し, 24時間後には対照値に近づく傾向が見られた.放線菌多糖Mannoglucan (MG) も効果が比較的速やかで, 4mg/kgの投与によって24時間以内にCL産生能のピーク (対照の2.7倍) を示した.酵母細胞壁成分Zymosanの場合には, 4mg/kg投与で48時間後にピーク (対照の3.2倍) を示した.担子菌カワラタケ菌糸体の糖タンパクKrestinの場合には多量の投与を必要とし, 200mg/kgを腹腔内に注射してから48時間後にピーク (対照の5倍) が見られた.細菌細胞壁ペプチドグリカンの構造単位であるMuramyl dipeptide (MDP) は, 0.4mg/kg投与48時間後にピーク (対照の3.2倍) を示した.MDPのアシル誘導体MDP-Lys (L18) では, 4mg/kg投与72時間後にピーク (対照の8倍) が見られた.大腸菌のリポ多糖 (LPS) は, 0.4mg/kg投与で1~24時間後のCLが対照の約25倍と最も高い値を示した.このように, 本報で使用した免疫賦活剤はいずれもマクロファージの活性酸素放出能を増強させる.それらは投与量に応じて, マクロファージ活性化の強弱と経時的変化の様相を異にすることが明らかになった.

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